肌へと当たる風の中から刺さるような寒気が消えた頃、休日の公園にはたくさんの人が繰り出して来る。真冬には誰もいなかった草の上に、歓声が戻ってきた。春の到来を祝うように、色々なものが宙を舞っていた。
サッカーボール、野球ボール。フリスビー。バレーボール。
その中で、高く上がったシャトルを追って体を翻す女性が印象に残った。
頭上を越えたシャトルは、彼女の背後へと落ちて行った。片足を軸にしてきれいに体を回転させる。気まぐれで姿を現す、つむじ風のようだ。風の流れがスカートの上にひだとなって表れている。髪が引かれて宙を舞い、流れるような動きが綺麗だった。
冬が過ぎて、着るものが薄くなると、全てが軽くなって動きも軽快になる。彼女も冬の間は防寒具を着て、冷たい風に熱を奪われないように身を隠していたに違いない。
冬眠から目覚めたかのようだ。動物は巣から出て野を駆け出し、草木は新たな芽を出し葉を茂らせる。そして人も、服を減らして空の下に身を晒すのだ。
彼女の手の動きに合わせて、ラケットが空を切った。その様はとても俊敏に見える。
色彩が戻ってきた景色のせいだろうか、枝に散りばめられた桜の花を背にして、軽やかに躍動する彼女の姿が華やかな舞踏のようでもあった。
これは儀式なのかもしれない。暖かい季節がやってきたことを祝うための。
冬が去った時に、見てみるといい。この光景は春が訪れたすべての場所に当たり前に広がっているはずなのだから。