絵になる景色はどこにある

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カメラを首に掛けようとする女性 夏に差し掛かった砂浜にカメラサークルの女の子たちがやって来た。インストラクターの注意を受けたあと、彼女たちはカメラを片手に被写体を探しに散っていった。みんなで連れ立って波打ち際に近付き、海に足だけつけたり、波で遊んだりして楽しそうだった。傍らでは、そういった光景を写真に収める女の子もいる。
 そんな中で、一人の女の子が、カメラを首から外してカメラのスクリーンを拭いた。そして、頭よりカメラを高く上げて、首にかけ直した。
 彼女は、頭を軽く横に向けてすこし遠くを眺めているようだった。どこか1点を見つめているのだろうか。この瞬間も、目に飛び込んでくる光景の中に、絵になるものがないか探しているのかもしれない。
 とらえた景色を印象的に切り取る構図を、心の中で探している。
 光を抑えて、明るいものだけを際立たせる。
 色をつけて、日常の中の幻想を、写真の上に焼き付ける。
 彼女の眼は眺めの中に隠された、絵になる情景を見つけ出すハンターのまなざしをしていた。だから、カメラをかけ直す姿の中に、アスリートがフィールドに入る前に靴ひもを結び直すような緊張感が内包されていると感じるのである。
 写真家にとって、目の前にあるものから美しさを取り出すことは、一種の競技なのだ。
 でも、彼女はもっと近くに絵になる光景が存在していることには気付いていない。いや、気付くはずがないのだ。それは、カメラを首にかけようとしている彼女の姿そのものなのだから。
 どこかに埋もれている美しい光景を、彼女は見つけ出せるだろうか?