8月が過ぎて、海水浴期間が終わった砂浜に、いまだ強い日差しが照りつけていた。夏の最高気温のピークは過ぎたものの、暖かい空気が僕らを包み込んでいる。海に入っても心地いいくらいの気温だった。
砂の上をにぎわせていた海水浴客はどこに行ったのだろうか。
海の家は解体されて、骨組みだけが、理科室の骨格標本模型のように晒されているだけである。夏の喧騒は、もう、ここにはない。一足早く、秋が来たことを宣言したかのようである。
砂浜の端にあるコンクリート桟橋の向こうから、女の子が跳び乗ってきた。
彼女は、海水浴がシーズンが終わった砂浜から帰途につくところであった。上着のファスナーは開けられたままで、下から水着がのぞいている。
いた。海水浴客は絶滅していなかったのだ。
今まで、日に焼けたり、海に入っていたりしていたようだった。回りは誰もいなくて、存分に海を楽しめただろう。桟橋の上を歩きながら、ファスナーを上げて歩き出す。
あの子はこの夏を存分に楽しんだんだろうか。
ああ、よかった。持ち上げた腕の日焼けが、夏の間を太陽の下で過ごしてきたことを示している。日差しはまだ強くて気温も高いけど、これから日を追うごとに光は弱くなっていくだろう。
夏は終わるのだ。
あの子にとって今日は今年最後の夏の日なのかもしれない。
あの子は来年も来るだろうか?そんなことを思いながら、この光景を脳裏に焼き付ける。
また来年も彼女に、素敵な夏の日がやってきますように。