女性はみんな舞台の上

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コートの女性
 駅のコンコースで、男の人が待ち合わせているようだった。
 あらゆる方向から人が視界に入って来て、すぐに別の方向へと去っていく。
 ある時、通り過ぎていく人の列から誰かが彼に近づいて来た。
 ようやく現れたひとは、こう声をかけられていた。
 「女優みたいだね」
 コートを着た長身の女の人が、ブーツを履いているせいで、とても足が長く見えた。
 男はなぜ、きれいな女性を目にした時、女優に例えて形容するのだろうか。
 女優といっても、タイプはいろいろある。カメラの前、あるいは舞台の上で演じる女性は女優であって、容姿には関係ないはずなのだ。
 その例え方が、女性に対する期待のようなものが込められているようで、申し訳ない気もする。
 『すらりとしたスタイル』とはこんな感じなのではないだろうか。ブーツが足を長く見せていて、長いコートが颯爽とした動きを演出している。こんな女性がいてほしい、という期待を体現した感じ。男が綺麗な人を見ると女優みたいだねって言ってしまうのは、他意はないのです。純粋にほめことばなのです。
 待っていた彼がそう言ったのは。服装が映画の衣装のように感じられたからではないだろうか。
 女の人がすごいボロボロな服を着てたとして、その人に『女優みたいだね』って言わないでしょう?
 映画だったら、そういう服装をするのは助演女優だろう。
 女優みたいだねっていうのは『主演女優』みたいだねの略なのだ。主役は、綺麗な格好をしているものだ。
 そう、彼女は自身の舞台の上の主役なのだ。
 女の人が服を選ぶときは、どのように見られるかは、常に意識しているのではないだろうか。大人っぽく見られたいか、可愛く見られたいか、はたまたワイルドに見られたいかによって服装は変わるに違いない。これから、そういった自分を演じるのだからね。
 待ち合わせにやって来た彼女は、「大人の女性」である自分の衣装を選んだのだ。
 女性ははみんな舞台の上に立っている。
 女性はいつも、なりたい自分を演じている。
 だから、君、「女優みたいだね」の言葉、間違っていないよ。