長い話はコーヒーと

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コーヒーショプで足を組んで座り顎に手を当てて話を聞いている女性

 日が落ちて暗くなった夜の街で、明るい一角があたりを照らしていた。
 その明かりの中で本を読む女性もいれば、隣の席ではスマホの画面を指先で叩いている。各々が自由に時を過ごしているのだが、皆、前に飲み物を置いている。コーヒーカップであったり、ドリンクの入った紙コップであったり。
 コーヒーショップの前を通りがかった。明るくて落ち着いた雰囲気の店内が、大きなガラスを通して見えた。その景色に誘われて、新たな客が入っていくのだろう。
 窓際の小さなテーブル席に、真剣に話を聞いている女性がいた。
 彼女は手を口元に当てて、視線をまっすぐに据えて、軽く相槌を打っている。テーブルの上に置かれたコーヒーカップに手を伸ばすこともなく、相手の話を聞いていた。
 長い話をしているみたいだなと思った。一体どんな話題が、彼女をを惹きつけているのだろうか。大人になってから、自分で出来る事、決められる事が増えると、会話の話題は大きく広がっていく。
仕事、結婚、交際、将来、旅行、噂。
他人から聞く話は、どこかで起きた事を伝えている。自分の知らない事がその中に埋もれているのである。役に立つ宝物を掘り起こしていく様なものなのだろう。今の自分に似通っている話ほど、ヒントが隠されているかも知れないのだ。
 世界中のあらゆるところで会話は交わされている。
 水を汲みに来た井戸のそばで。
 オフィスのコーヒーメーカーの前で。
 燃える薪が暖かい空気を放つ暖炉の前で。
 彼女の姿も、その光景の一つに違いない。
 ブーツを履いた足を組んで、軽く肘をテーブルに乗せている姿に格好の良さを感じた。着ている服、場所、ポーズが大人の女性を体現している様な気がするのだ。
描き終えた後に振り返ると、成熟した女性がいる景色を絵にする事が出来て嬉しく思う一方、彼女の傍らに置かれていたコーヒーが冷めていないのか、心配にもなってくるのである。