No Music, No Life

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イヤホンをコードを引っ張って外す女の子
 人が川のように流れる大きな柱の前で、誰かと待ち合わせていたであろう女の子が、 おもむろに首をかしげて胸元の手を引いた。
 曲が終わったのか、それとも遠くに待ち人の存在を認めたのか、携帯音楽プレイヤーのイヤホンを耳から外したのだ。
 人の流れから目を離さないように、上目遣いの視線は源流へと向けられていた。この姿は、今の時代の音楽と人の関係をよく表しているのではないかと思う。
 ソニーのウォークマンが発売されたのは、もう30年以上も前のこと。それ以前の音楽を持ち運ぶ手段はラジカセだったのだから、革命的なことであった。
 それまでは無骨なまでに角ばった、重いラジカセを、背中にのせる形で持ち運ぶのが一般的だった。それも、どこでも音楽を聞くためでなく、屋外で曲をかけると言った使い方のために。
 ウォークマンの登場によりポケットに入る、誰でも、女の子でも持ち運べるガジェットが誕生した結果、好きな音楽を、好きな時に、どんな場所でも聞くというスタイルも生み出された。
 それによって、音楽にまつわる景色も変わったのだ。携帯音楽プレイヤーでお気に入りの曲を聴きながら歩くという行為が一般的になったのだから。
 そして、イヤホンもがファッションアイテムの一つに加えられた。
 携帯音楽プレイヤーが世に出る前のイヤホンは構造が簡単だったのか、丸い円盤から筒が出ているような簡単なデザインだった様に記憶している。
 それが、全体を局面で覆った未来的な形になり、色のバリエーションがとても増えた。
 そういえば、昔、同級生がかっこいいイヤホンの付け方をしていて、憧れたなあ。
 プレイヤーもデザインを競うようになって、薄くて小型なものを目指していった。カセットテープからメモリに置き換わった今、ジッポーライターくらいの大きさでカセットの何倍も再生時間があるのだから、その進化といえば、類人猿から人類になってしまうくらいの変化だろう。
 彼女の姿は携帯音楽プレイヤーの登場によって作られた光景だね。
 イヤホンを外すために顔を傾けた姿が、かっこいい。
 イヤホンのケーブルが伸びていく先の手のひらに置かれたとても小さなプレイヤーが、クールな感じを受けるのです。
 この姿は、未来でも残っているのだろうか?
 Bluetoothイヤホンのように無線で音楽を送信することが当たり前になって、ケーブルが完全になくなったらこんな光景はなくなってしまうのではないか?。
 もしかしたら、次の10年で消える光景かもしれない。次の革命が、音楽の聞き方を変えないとは限らないのだから。
 でもその時は、新たな音楽と人間の関係を表す光景が生まれるのではないだろうか。