列車が到着する度に、改札口を人があふれて出て行った。そこからは、川が枝分かれするように、別の方向へと散っていく。
待たせていた友達に向かって、改札を抜けるとすぐに駆けだす女性が目に留まった。彼女は笑顔で、カバンをしっかり手で押さえて小走りで走って来た。待った?と声をかける。駆け寄ってくるところが、嬉しさを表しているような気がする。誰かが、彼ら自身の時間を使って待っていてくれるということは、自分が必要とされているという事でもあると思うのだ。もし、待っているがいると知ったらすぐにでもそこに向かうだろう?
待っている人のところにたどり着いた時、皆、感じる事のかもしれない。自分には生きていける場所が、あるのだと。立つことのできる足場を見つける事で、みんな生きていける。そこから踏み出していくことで、世界を広げていける。人はこの繰り返しの中で生きていく。
いつか別の時には、彼女が誰かを待つこともあるだろう。自分の時間を使って。そうして、また誰かに生きていく場所と、最大の肯定感を与えるのだ。
こうして人の輪は広がっていくのかもしれない。
再び、列車が到着したようだ。新たな人の波が改札を抜けていく。待っていてくれたこと、今日会えたことを喜ぶ光景は、人の流れに乗って去っていった。