花火が打ち上げられる会場に向かって、人の列が続いていた。どれだけ多くの人がいるのかわからないが、会場にはまだ、人が入れる余裕がありそうだった。ゆっくりではあるが、人は整然と流れていく。
特別な日だから、写真を取る人はたくさんいた。立ち止まってカメラを自分に向けたり、人から撮ってもらったり。
もちろん、中には歩きながら撮ったりすることもある。
友達連れで歩いていた彼女は、前を歩く友達から声をかけられたようだ。友は、カメラを構えて後ろを向いている。彼女はカメラのレンズを伺うように頭を傾けた。片手は手を返して体に軽く触れる仕草を作っている。笑顔のままで、姿勢を保ったまま、ゆっくりと歩いて行った。
彼女はこう思っているだろう。これは世界で1番可愛いポーズであると。それでいい。そういった思いが仕草となり表情となって、コミュニケーションとして伝わっていくのだから。
友達がボタンを押して写真を取ると、彼女は頭を真っ直ぐへと戻して、手を下げた。友達に駆け寄って、撮れたばかりの写真を見る。彼女の作ったポーズは可愛く写っているだろうか。あの仕草は、もう見えない。でも、彼女の顔には、笑顔がまだしっかりと残っているのだ。