旗を掲げるように

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自撮り棒を掲げる浴衣の女の子 花火が夜空に咲く日の夕刻、沢山の人が、より花火に近いところに空いている場所を求めて彷徨っていた。その人たちとは違い、歩きまわることをやめて、早々に打ち上げ場所から少し離れた所で花火見物すると決めた人たちもいた。その中に写真を撮ろうとしているカップルが見えた。
 二人は笑顔で言葉を交わしていたが、女の子のほうが自撮り棒を高く上げて、彼は一歩、彼女に寄った。
 二人がフレーム収まるように、高く上げられた自撮り棒にスマホは横向きにセットされている。
 棒を持つ姿がまるで旗を掲げる時のようで、腕はしっかりと棒を掴み、重さを支えるために少し彼女の体が傾いていた。それを彼も後ろから支える。
 二人の視線はカメラに向かって空を見上げるように真っ直ぐに向けられていた。顔を上に向けて高いところを見る姿勢に、何かの希望に満ちている印象を感じ取った。顔を下に向ける姿勢は後悔などのように、過去に囚われているように映るのだが、上を向いた姿勢は、未来を見ているような気がするのだ。先の事は誰にもわからない。だから、空を見上げる人の中に、夢や希望を感じるのかもしれない。
 彼女は写真を撮ると、なれた手つきで棒を下ろした。
 彼らは、花火が打ち上げられる方へ向かって並んで立ち、再び空を見上げた。