夕暮れ近くの海岸で、波打ち際を歩く1組のカップルがいた。笑いながら歩いていく。
彼女が足元に手を伸ばした。そこは石がたくさん転がっているところで、何個か手に取ったようだ。そして軽くその場でジャンプすると足を踏み出して、大きなフォームで石を海に向かって投げた。
1回、2回、3回。
手から飛び出した石が、水面に当たって跳ねて行った。
この遊びは、世界中の水辺で行われていることだろう。石が水に跳ね返されて進んでいるだけなのだが、水面の上を生き物のように走っている様子が、目を引くのかもしれない。まるで自分の手から、想像を超える動きをする小さな生き物を生み出すような、そんな気がするのかもしれない。
もう一回トライしようとしたのか、彼女は持っていた石を握りなおして、海の方へと向き直った。足を力強く踏み込むと、石がよく跳ねるようにサイドスローで体を回転させて腕を振った。投げるフォームが、野球選手のように感じられた。
石はさっきと同じ回数跳ねると、海の中へと消えたようだ。
彼らはしばらく海を眺め、笑いながら話して佇んでいた。石が弾んで、彼らの会話も弾んだのだろうか?
笑顔を残して、二人は水際から離れて行った。