海水浴が終わる頃は気温が低くなって、海は泳ぐには冷たくなっている。出来ることといえば、足を海水に浸すことぐらいなものだった。そんな時、砂浜でひと組のカップルが海に足をつけて立っていた。
やがて二人は、遊びを思いついた。二人が数メートル離れた状態で交互に水面を蹴って水を掛けあって、相手はそれを避けるというもので、最初に彼が水を蹴った。細かくなった水滴が彼女の方へ向かって飛んで行き、彼女は歓声を上げながら体を返してそれを避けた。
二人とも、楽しさに大笑いしている。
彼女の番になった。砂の上に足をしっかりと置き直すと、片足を浮かせて、波がやってくるのを待った。そして、足を後ろに引くと、次の瞬間、大きく前に振って、水面を蹴り上げた。
裸足のまま真っ直ぐに大きく上げた足が印象的だった。
足の甲がやって来た波頭を捉えて、たくさんの水を空中へと放り投げた。彼も飛んできた水滴の的となり、たくさんの水を浴びることとなった。彼らがデートのために着た綺麗めの服やジーンズはあちこち濡れてしまっている。でも、大丈夫。気温がまだ高いから、直ぐにでも乾くだろう。
もうすぐ、一段と気温が下がって、水に足をつけることさえできなくなる。
彼女の姿は水が冷たくなる前の、夏の終わりの風景なのです。