カバンをかけるひと

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カバンを肩に掛けようとする女の子 記念写真の名所では、その日も人が大勢並んでいた。
 一組終わるごとに、次の組が撮影場所に立って、素早くポーズを作っていく。そこで写真を撮る時には、みんなカバンは隅の見えないところに置いていた。カバンは少々厄介者らしい。
 何回かポーズを変えて写真を撮った女の子の番は終わったようだった。彼女は、置いてあったカバンのショルダーストラップを掴んで肩の上へと持ち上げた。
 彼女の姿は現実の世界へと戻る瞬間なのだと思った。
 つい先程まで、彼女は眺めのいい場所で、一番の笑顔を作り、最高に可愛いポーズでカメラに向き合っていた。それは、今日を記録に留めるために映画の1シーンのように演出された世界だった。言わばそこは仮想の世界で、カバンは存在しないのだ。だから、皆、見えないところに置くのだろう。
 しかし、彼女は現実の世界に戻ってきた。カバンには大切なものがたくさん入っているに違いない。これこそ生きている人の本当の姿であるのだ。
 人は、写真を撮ることを通して、仮想の世界と現実の世界を行き来しているのかも知れない。

 肩にしっかりとカバンをかけた彼女は、駆けだしていった。カバンもそれに合わせて大きく揺れた。