9月ともなると、太陽が西の空に差し掛かる頃の海岸は少し冷たい風が吹き、足元の砂は熱さが引いて程よい温度になっている。そんな、気付かないうちに秋になったことを感じさせる波打ち際に、 白い服に身を包んだ女性とプロ仕様のカメラを持ったフォトグラファーが近づいて行った。
二人がしばらく話をした後、白い服の彼女が足首まで海に入り、少し離れた。
フォトグラファーはレフ板を構えて、跳ね返った光が彼女をよく照らすように動かすと、カメラを向けた。
何度もポーズを変えるたびにカメラを動かして、たくさんのカットを撮ったようだ。彼女が水辺を歩いて数歩離れた時、声を掛けられて後ろを振り返った。
水辺に立つ女性像は名画などで描かれていることが多いのはなぜだろう、と考えた。
さざ波の作る光の乱反射が、とても綺麗だからではないだろうか。そう、女性像の背後から水面の作る輝きが、まるで光をまとっているように見えるのだ。だから、絵画、写真、映像で、水辺の情景として描かれるのだろう。
彼女はカメラに向かって、まだなおたくさんのポーズをとっていた。時には帽子を手に取ったり、海から上がって座ったりしながら。
彼女の背後には、赤みを帯びた光を放つ水面が横たわっていた。