海の見える公園で、写真撮影に勤しんでいる人たちを見た。一人の女性がモデルとなって、数人のフォトグラファーがシャッターを切っている。まだ陽の高い時から、小道具、場所、ポーズを変えて、色々な写真を撮影していた。
日が低くなって光が柔らかく、赤みを帯びてきた頃、風上に向かって立っている姿を撮影し始めた。彼女は真っ直ぐに太陽を見据えるように向き、風に吹かれたスカートは小刻みにはためいた。
何度かシャッターを切ると、フォトグラファーはカメラをおろして撮ったばかりの写真を見た。
モデルの彼女はその作業を眺めていたが、退屈になってしまったようだ。手を羽ばたくように動かし始めた。強い風が袖を後ろへと引いていった。手を広げた姿勢と大きく広がった袖が、鳥のようにも見えた。
これは彼女の心を示しているのかも知れない。
彼女は綺麗に着飾って、雲一つない空の下で夕日に赤く照らされている。その姿を、腕に覚えがあるフォトグラファー達が撮っているのだ。彼女は美しい、と感じさせるには十分だろう。
彼女が感じている嬉しさで、心も羽ばたいていたのかも知れない。
陽は更に落ちて、橙の光の玉のようになった。フォトグラファー達は彼女の後ろから、シャッターを切っている。
美しい写真が撮れているだろう。