都市の玄関口になっている大きな駅は、古くからそこにあった場合が多い。少しづつ、改築や新しい建物の建設を経て大きくなって来たのだ。初めて来た人たちにとっては、巨大な迷宮となっているように感じられるだろう。別の鉄道に乗り換えるだけで行き先のわからない通路を通って行かなくてなならないのだから。
その駅の一番大きい改札口の近くに、インフォメーションデスクが設置されて、道を教えてくれる女性が配置された。彼女はホテルの従業員のような制服に身を包んでいて、一見して駅の公式な案内役だと分かるようになっている。
改札から出てきた人の波から、時折、インフォメーションデスクを見つけて道を尋ねる人が現れた。その度に彼女は、用意していた地図を使って、進むべき通路、曲がるべき角を示し、時には手振りで案内していった。
そして、外国からの客にも英語で対応してくれる。
何人ものキャリーバッグを引いた外国からの観光客が彼女の元から次に進むべき道を見つけて去っていった。中には、旅行の記録か、それとも珍しいのか、連れの者が道を聞いている姿を写真に収めていた。外国から言葉の違う国にやって来る人たちには巨大な駅はますます不可解な迷宮であろう。
紛れもなく、彼女は迷宮の案内人なのだ