時間との闘い

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腕時計を見るマラソンを走る女性 マラソン大会が開かれた日、コースの脇に立って走っていくランナーたちの姿を見ていた。目の前を川の流れのように一方向に人が駆け抜けていく。川が干上がることがないように、永遠に続くかと思わせるほどランナーの列も途切れることがなかった。
 走っていく人の中に、自分の腕に視線を落とす女性が目に留まった。手首のあたりを見つめている。走っている時でも見やすいように、大き目の腕時計が腕に付けられていた。
 ランナーにとって、時間は目標であり、制限でもある。
 ゴールタイムがどれだけ早いかが自分の能力の高さを示すだろう。反対に、ペースが上がらなくて一定時間内に走り切れなければそこで終了となってしまう。マラソンにおいて時間とは唯一にして絶対の指標なのだ。
 自分がどんなペースで走っているのか、もっと早く走るべきなのか、ペースを抑えるべきなのかを知るために、ランナーたちは時計を見る。5km、10kmという区間ごとのスプリットタイムが次の走りを決めるのだから。
 彼らは戦っている。その相手が時間なのだ。
 彼女は何度か時計を見て時間を確認しているようだった。ゴールまでの残りの距離は、かかる時間の長さでもある。満足のいくペースだったのかはわからない。彼女は時計をつけた腕を再び振って、走り続けた。